良い話になるでしょうか?
私は二十歳頃、諸事情でお水をしてました。
そのお店はタクシーと契約しており、深夜の送りはタクシーで女の子数人で相乗りでした。
私の家は遠方でいつも最後の一人になり、大体のドライバーさんはよく話し掛けてくれました。
私は高校時代に普通科ですが美術を専攻していました。
その学校の玄関ロビーには約10期前の先輩の大きく立派な油絵が飾ってあり、当時の有名なコンクールで優秀賞をとったというもので、普通科しかない公立のその母校ではだいぶすごいことだと美術の先生から聞いていました。
ある日の送りで乗ったタクシーの運転手さんが『私も高校まで○○(私の地元)にいたんだよ』と話してくれました。
なんとその母校も一緒で、話に花が咲き、そのロビーの絵の話になりました。
そうしたら、なんとそのドライバーさんがその絵を描いた人だったんです。
私は作品名も名前も知っていて、よく見たら車に貼ってあるドライバーさんの名刺にその名前があって………すごい偶然にとてもビックリしました。
『まだ飾ってもらえてるんだ』とドライバーさんも喜んでいました。
しかし、そんな立派な絵をかける人が何故タクシードライバーを?と言う話になり、一度は絵で食べて行こうとしたこと、話が膨らみ始めた頃に家業が傾いて借金に追われることになったこと、まだ夢を諦めてないということ、色んな話を聞かせてもらいました。
私も事情があってお水をしていて『タクシードライバーやホステスとか立派な仕事だと周りは思ってくれないことも多いけど、何かの理由のためなら胸をはって頑張らなきゃね』と励まされました。
昼も夜も働いて、普段はしんどい1時間弱の帰路に、とても感動的な出来事でした。