「全て"正解"」ではありませんが、間違いと断定することもできません。
...「常用漢字表」の音訓によれば、「箇」の音は「カ」(箇条、箇所)、「個」の音は「コ」(個人、個性、一個)となっています。
...当用漢字音訓表に「個」の音として掲げられているのは「コ」だけですから、それに従って書くとすれば、「箇条」「箇所」と書くべきです。
...ただし、国語審議会が昭和29年3月に報告した「当用漢字補正資料」によれば、「箇」の字を当用漢字表から削除し、そのかわりに「個」に「カ」という音を付け加えました。つまり、「個」で「箇」の代用をさせようとしたわけでする。この補正案は、単なる案にとどまって、従来の当用漢字の内容や、法令及び教育上の取扱いは、変更されませんでした。ところが、新聞界に限っては、昭和26年からこの補正案を紙面に採用することになり、各紙がいっせいに実施しました。そのため、新聞界では、「箇所」「箇条」と書かずに、「個所」「個条」のような用字法を採っているわけですが、実際の紙面では「個所」と「個条」の二語にしか用いず、「○個月」「○個国」「○個年」などは、すべて「○か月」「○カ国」「○か年」のように仮名表記を使っています。「個所」「個条」の場合でも、例えば、
......疑問の個所...工事個所...破損個所...一々の個条...各個条ごとに...個条書き
のように、単独で使う場合や複合語として用いられる場合に限られており、数詞に続いて使われるのが普通です。
...ところで、数詞に続けてモノを数えるときには、旧表記では「五ヶ所」「五ヶ条」のように小さく「ヶ」と書くことも行われました。また、固有名詞の場合にも「駒ヶ岳」「槍ヶ岳」「青ヶ島」のように書かれます。これらは、一般には、片仮名の「ヶ」を書いて、「カ」または「ガ」と読むのだと意識されているが、本来はそうではありません。この「ヶ」は片仮名ではなく、漢字の「个」(箇と同字)または「箇」のタケカンムリの一つを採ったものが符号的に用いられてきたものです。したがって、戦後の公用文や教科書などでは「ヶ」を使わず、「か」を大きく書くことで統一されてきています。新聞では、社によって方針がまちまちで、平仮名の「か」を大きく書くもの、片仮名の「カ」を大きく書くもの、また「カ」を小さく書くもの等に分かれています。片仮名を使ったり、あるいは小さい活字を使ったりするのは、旧表記で「ヶ」を小さく書いていたころの影響が残っているのでしょう。
...ところで、結論としては、漢字を使う場合は「箇」、仮名書きにする場合は、公用文や教科書のように平仮名の「か」を書くのが、現在のところ最も穏当な書き方と思われます。
...なお、「槍ヶ岳」「青ヶ島」のような固有名詞の場合は、その固有の書き方に従っていいわけです。ただし、「霞が関」「自由が丘」のように、住所表示の実施によって、表記の改められた例もあります。
[参考文献]『言葉に関する問答集 総集編』文化庁編集