セックスレスが民法770条1項の離婚原因(5号原因―婚姻を継続しがたい重大な事由)に該当することには、判例、また、学説上も争いはありません。
御参考までに、セックスレスを理由とする離婚を認めて慰謝料を肯定した判例、協議離婚後にセックスレスを「不法行為」(民法709条)に当たるとして慰謝料を認めた判例を以下に挙げておきます。
古い判例からから順に
最高裁 昭和37年2月6日―セックスレスが夫の性的不能を原因とする事案
夫が、婚姻前に副睾丸結核のため睾丸を摘出。婚姻後、1年6か月の同居期間中の性交渉は皆無。妻の離婚請求を認めました。
名古屋地裁 昭和47年2月29日―夫の性癖が原因のセックスレス
結婚当初の4ケ月は性交渉がありましたが、その後は夫は性交渉を拒否(実は夫はバイで、他の男性と同性愛関係)、妻の離婚請求は認められました。
横浜地裁 昭和61年10月6日―夫に性衝動が無い事案
夫は新婚旅行中から妻の体に全く触れず、同居後も性交渉が皆無。同居開始後、1か月半で妻は肉体的・精神的に疲れて実家に戻り、妻からの離婚請求、慰謝料請求が認められました。
京都地裁 昭和62年5月12日―性的不能の事案
夫は婚姻に際して自己の性的不能を妻に告げておらず、同居期間3年半の間、性交渉は全く無し。性的不能を妻に告知しなかったことは信義則違反(民1条2項)にあたるとされて、妻からの離婚請求が認められました。
京都地裁 平成2年6月14日
夫に性衝動が無く、性交渉の無いまま婚姻して1か月足らずで別居、協議離婚が成立。妻から、結婚準備のために要した費用の請求が認められました。
福岡高裁 平成5年3月18日―夫の性癖が原因のセックスレス
夫がポルノビデオに異常な関心を示して自慰行為に耽り、妻が性交渉を求めるが拒否(約2年間のレス状態)。妻からの慰謝料請求が認められました
このように、裁判例は、比較的短期間での、セックスレスを原因とする婚姻関係の破綻を肯定する傾向にあります。
ですから、御質問者の約1年というセックスレスの期間も、上記判例に照らせば、決して、期間として短いものではありません。
要は、レスの期間の長短にかかわらず、御二人の関係が修復しがたい状況か否かがポイントです。
問題は、レスの立証責任、立証方法です。
立証責任は、原告=離婚を申し立てた側、あなたにあります。
立証方法ですが、密室の中の問題ですから、他人を頼るわけにはいきません。
そこで、どのように、あなたが性交渉を求めたか、その際に夫がどう言って拒否したか、あるいはどのような態度を示したかを、できるだけ細かく(細かくというのが重要です)日記に記すこと、もしくはICレコーダー(テープレコーダー)を枕元に忍ばせて2人の会話を録音すること(必ず、日付を入れてください)です。
また、あなたがセックスレスを相談している親しい友人がいれば、その方の証言も有力な証拠になります。
追記
離婚を巡る紛争には、調停前置主義が採られており、裁判の前に調停にかけることが要求されています。そして、ほとんどの場合が調停段階で決着しています(裁判離婚の割合は10%強にすぎません)
(調停前置主義=裁判の前に、裁判官を中心に2名の調停委員が出席し、当事者双方の言い分を聞いて、具体的解決案を提示)
ですから、相手方が離婚に同意しない場合には、まず、あなたが家庭裁判所に出かけて調停の申し立てを行うことになりますが、この場合、弁護士を立てることは不要で、安い費用で、あなた自身で行うことができます。