この二人の建築家をどちらが偉いか較べることは無理でしょう。黒川は京大を出て東大の大学院を出て丹下健三門下の優等生。安藤忠雄は高卒で建築は独学。こつこつと下から東大教授まで実力で駆け上がったたたき上げ。元ボクシング三回戦ボクサーでファイトマネーで海外へ勉強に出かけた行動力があります。いい加減な工事をする業者はボクシングで伸してしまう伝説もあります。私は黒川が設計した国立文楽劇場をよく利用します。しかし表から見ても中へ入ってみても、文楽など一度も見たことも無い人間が設計しただろうと感じさせます。安藤の設計はいくつか見ましたが良くも悪くも安藤が設計したと思わせる個性があります。建築は工学を基礎にした美術芸術です。建築の使命は機能性や快適さだけではありません。その建築物の内外で繰り広げられる儀式やまつりごとの背景にもなります。安藤の教会や美術館の設計はそのことをわきまえています。ただしそれを重視するあまり障害者や高齢者などハンディのある人には頗る評判が悪いのも事実です。二人の設計した建築物を実際にいくつか御覧になってご自身の目で確かめてください。権威のある意見に左右されても、評価は後に大きく変わることがあります。好きか嫌いかで判断すればいいんです。