『荊楚歳時記』 人日（ジンジツ、七日）、鬼車鳥が飛ぶという伝説 ＜原文＞ 「人日夜多鬼鳥、曰夜行游女。有小児家、不可露衣物。此鳥夜飛、以血点之、児輒病癇。又有鬼車鳥、能入人家、収入魂気、人夜間聞其声、則滅灯打門、捩狗耳以厭之。」 ＜読み下し＞ 「人日の夜、鬼鳥多し、夜行遊女と曰ふ。小児を有する家、衣物を露わにすべからず。この鳥、夜飛び、血を以て之に点す。児、輒ち癇を病む。又た鬼車鳥あり、よく人家に入りて人の魂気を収む。人、夜間にその声を聞かば、則ち灯を滅し門を打ち、狗の耳を捩じ、以て之を厭ふ。」 ＜口語訳＞ 「正月七日の夜には鬼鳥が多く、これを夜行遊女という。小児の居る家は夜、衣類を外に出してはいけない。この鳥は夜飛んで小児の衣類に血を落とし印をつける。血の印をつけられた小児はたちまちに癇（ヒキツケ）をおこしてしまう。 また鬼車鳥というものがあって、よく人家に入り込み人の魂をとってしまう。人は夜間にその声をい聞いたならば、みな灯を消して門を閉じ、犬の耳を捩じり、これを避けた。」 鬼鳥：九頭の蟲。 鬼車鳥：悪鳥で「ふくろう」の属だと言われている（中国ではフクロウは悪鳥）。 狗：犬のこと。犬が鬼鳥・鬼車鳥に噛み付いた、という言伝えがあり、これ等の悪鳥に対抗できるのは犬だと信じられていた。