ヨウ素滴定は、酸化還元滴定の一種です。酸化還元反応を利用して、試料の濃度や物質量を調べるための実験です。
中和滴定のときはメチルオレンジやフェノールフタレインなど、終点を決めるのにpH指示薬を使いますが、酸化還元滴定では使いやすい指示薬がありません。そこで、反応の前後で色が変わる酸化剤や還元剤を指示薬の代わりにします。
ヨウ素の有無を調べることができるヨウ素デンプン反応(ヨウ素溶液はデンプンと反応して青紫色になる)も指示薬として使われます。そのためには、終点でヨウ素がちょうどなくなる、もしくは終点をすぎるとヨウ素が余るように滴定しなければいけません。
おそらく最も有名なヨウ素滴定は、過剰のヨウ化カリウムKI溶液を濃度を調べたい酸化剤と反応させて、生成したヨウ素を濃度既知の還元剤、大抵はチオ硫酸ナトリウムNa2S2O3水溶液で滴定する間接滴定です。終点でヨウ素がなくなる滴定ですね。
以下手順
①調べたい酸化剤の水溶液適量に過剰のヨウ化カリウムKI溶液を加え、酸化剤を全て反応させてヨウ素を生成させる。
※ヨウ素1molを生成させるのに酸化剤が何mol必要か調べておきましょう。
②①を濃度既知のNa2S2O3水溶液で滴定する。
③ヨウ素の黄褐色が薄くなって淡黄色に近づいたらデンプンを加え、滴定を続ける。なお、水溶液全体が反応するように、滴下するごとに水溶液を振り混ぜる。
※初めからデンプンを加えると、デンプンの奥にまでヨウ素が入り込んでしまいます。こうなると酸化還元反応がうまくいきません。デンプンの奥のヨウ素が反応してくれないため、正確な量が測れません。
④水溶液中に青紫色の濁りが生じ、水溶液を混ぜても消えなくなったら滴定終了。
⑤1molのヨウ素を還元するのに、Na2S2O3が2mol必要。つまり、滴下したNa2S2O3の物質量(mol)の半分が①で生成したヨウ素の物質量(mol)です。このヨウ素を生成させるのに必要な酸化剤の物質量(mol)を求めましょう。
ヨウ素やヨウ化カリウムは、直接滴定に使うと反応がうまくいかず正確に滴定できません。
(この辺りの仕組は省きます。興味があったら別途調べてみてください。)
そのため、このような間接滴定が一般的になっています。わざわざこんな手間をかけてまでヨウ素を使うのは、酸化剤の滴定に利用できる、反応の前後で色が変わるような手頃な還元剤がないからです。もっと使いやすくてかつ正確に滴定できる物質があったらそちらを使うのでしょうが……。
酸化還元滴定で使う指示薬としては、ほかにも還元剤の滴定に使う過マンガン酸カリウムKMnO4などがあります。二クロム酸カリウムKCr2O7も色が変わるので滴定に使えるのですが、毒性が高いなどの理由で基本的に使いません。