「荻」については、「くさかんむり」に音符として「テキ」が付いた形声文字、という解釈が一般的ではないかと思います。この字がいつ頃に成立したかは知りませんが、「狄」については金文や甲骨文で既に「けものへんの右側に火」という形で出てきますので、「荻」についても同様に大きな字形の変化はないでしょう。「テキ」という音符については理由不明ですが、「荻」に「アシ笛」という意味もあるそうですから、「笛」(この字も「テキ」)と関連する可能性があります。
「萩」についても、形声文字という解説を見かけるのですが、なぜ「シュウ」という音が付けられたのかは要領を得ません(「字解」あたりなら何か有益な話が出ているかもしれませんが)。「萩」は元々は秋に花を付けるヨモギのことを指した字でしたので、個人的にはそれが由来ではないかと想像しています。ただし、「秋」はもともと、季節ではなく「実り」という意味を表したとも言われますので、言ってる本人も半信半疑です。
字形については、自分は篆刻(おそらく漢代)以降しかわかりませんが、その範囲であれば「くさかんむりの下に秋」という点では変わっていません。ただし、「秋」の字形が時代と共に変わっていますので(例えば篆刻では字形の左右が今とは逆、つまり「火禾」で「あき」)、「萩」も同様に変わっています。
「意味の違い」というのは、おそらくヨモギ(くさよもぎ)という意味のことをおっしゃっているのでしょうが、上述のように「萩」の原義にあたります。しかしヨモギは、日本では草餅などに使うことから春の香草として知られ、俳句の季語でも春に分類されます。それだけに字に「秋」が含まれるのはイメージにそぐわず、これを字形の似た「荻」で代用して、「萩」の字は国字としてハギの意味で使われるようになったのでしょう(ハギは日本ではよく自生しますが中国ではマイナーな植物のようで、本来の漢字があるかどうかは不明です)。